光と影が織り成す原風景へダイビング。
海底8メートル、未知なる世界への誘い。
スキューバダイビングを始めた人々は「人生が変わった」と口々に言う。海中、そこはダイバーにとっては幸せに満ち溢れた天国。上下左右360°重力から開放された世界。人間世界の雑音が無い神秘的な場所。私たちが知っている海と大地の境界のほんの少し下には、壮大で感動的な空間が広がっている。
きっかけは「宮古島の冬の海」
スケジュールに余裕があったから、思いきって海に潜りたいと思った。ゲストハウスで知り合ったダイビングの宿泊客の人たちに「宮古島は冬の海が最高だよ!」と言われたけれど、泳ぎもさして得意じゃないし、正直それほど興味があったわけでもない。こんな時期に海に潜るなんて・・・でもなぜか、今、潜らなきゃと思った。
宮古島は世界中のダイバーも憧れる有数のダイビングスポットを持つ島だから、もちろん急なダイビングにも応えてくれるダイビングショップも数多くある。私はもちろん知識なし、まったく素人の初心者なので、最初はスキューバダイビングという扉を開けるのに不安があったし、危険を伴う冒険をスタートするのにはそれなりに勇気が必要だった。けれど、一緒に旅をするパートナーがとても心強く感じられ、未知の領域への期待に変るのもそれほど時間がかからなかった。
危険はゼロではない。まずは知ること。
マスクのサイズを確認。サイズはばっちりだ。酸素ボンベの空気を吸ってみてる。潜る前にちゃんと呼吸ができるかも陸でしっかり練習する。水中カメラの使い方を習ったけれど、私は今回はズームで精一杯かな。慣れている人はマクロ撮影なども楽めるらしいけれど、高度な機能もとりあえず今回はよし。
一つ一つの行程を進めるごとに、胸が高まるのがわかる。早く潜ってみたい気持ちになっている自分がいた。
インストラクターさんとの合図の確認。シュノーケルを咥えて顔を水面につける練習もしっかりと。呼吸に慣れてきて、やっと海と繋がった気がした。練習中にウミヘビが横切って行くのを見て一瞬ドキッとしてゴボゴボゴボッとなったけど、インストラクターさんは「驚かせなければ襲ってこないから大丈夫ですよ」と笑っていた。いちいち驚かない彼女を見ると、自然を深く知っているからこそ、他の生物とも仲良くやっていけるのかなと思ったりする。
雄大な海の世界が心の緊張を緩和してくれる。
地上でも見事な地形は無数にあるけれど、海中は自然が作り出した地形のすばらしさに加え、透き通るようなブルーに光の陰影がコントラストを付ける。降り注ぐ光は、シルクのカーテンのように柔らかくゆらめき、動物たちが暮らす月夜の森のような海底にその微光を漂わせる。
海に潜ると人間は潜水反射が起き、内蔵器官を守ろうと心拍のスピードが落ちるらしい。さっきまでドキドキしていた心臓も今では落ち着いている。これは他の海棲哺乳類、つまりクジラやイルカ、ラッコなどと同じなのだそうだ。ここでは、生命の波音が五感に直接囁いてくる。自分の呼吸音すら穏やかで心地よく、すべてが鎮まっている。掻き乱すものは何もない浮遊感は体で分かっていても頭が理解しない。する必要も無いのかもしれない。今はただ、この大気圏内の大宇宙遊泳を楽しむことで精一杯。
数々のダイバーの胸を衝いた鮮やかな生態たち。
イソギンチャクの中にはカクレクマノミ。手を伸ばしてみるとツンツンしてきて、なんだか会話をしているみたい。他にもイラブチャー、アカネハナゴイ、沖縄の県魚のグルクンなど、南国らしい色とりどりの魚が眼前を横切っていく。ここでは人間も自然界の一員として迎えられているような気がした。
テレビや雑誌でしか見たことが無い色鮮やかなサンゴ礁や、今や魚の棲み処となっている沈没船など、非日常のオンパレードが私の常識をどんどん崩してしまう。この光景にはそれほどのインパクトがある。
世界の秘宝を共有する贅沢な時間。
誰のものでもないけれど、皆の心に残るもの。
同じ場所で、同じ時間、同じ物を見て、同じ話ができるから、ダイバーはすぐに仲間になれるのだろう。ダイビングするためだけに一人で宮古島に来ているというお客さんは年間20本くらい潜るらしい。今回、私が初めてのダイビングだと言うと「初めての経験が宮古島だなんて、すごい贅沢!」と言われ、まだ実感は無いけれども、本当に貴重な経験が出来たのだと思う。
初のダイビング体験で海の魅力を伝えるには、たった30分水中にいただけだったにも関わらず、飛び込んでくる景象のスケールがあまりにも大きすぎてうまく伝えられる自信は無い。けれど、これだけは言える。私の思うダイビングの魅力は、ひとえに、地上とは違う水中という別世界を体験できること。見たことも無いさまざまな海洋生物を、今にも手に触れそうな距離に感じながら、神秘的で美しい海の世界を遊泳する時間は、まるで夢の中にいるような不思議な感覚だった。
宮古島にはダイビングスポットはまだまだ沢山ある。来年はもっとスキルアップしてもっと海を楽しみたい。次は絶対にいい写真が取れるようになりたいと思う。そしてまた一つ、宮古島に来る目的が増えてしまった。
手付かずの海は文句なしに美しい。
最後に見せてもらった写真、潜る前の人が見ていたら作り物だろうと疑ってしまうかも知れなけれど、海の中ではさも当然の様にこの一大パノラマが広がっている。詳しい場所は分からないけれど、今日潜った海と同じ海だということを理屈ではなく直感が告げている。これが宮古島の海なのだ、と。
このテーマの主な撮影地
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Wアーチ
- 住 所:
- 沖縄県宮古島市伊良部
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BIGHOLIDAY
- 住 所:
- 沖縄県宮古島市平良字狩俣4103-15
- 電話番号:
- 0980-72-5422
参考スポット
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魔王の宮殿
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ミニ通り池
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マリンレイク
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アントニオガウディ
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七又アーチ